第7章 失恋の乗り越え方
「ごめん。」
今までで一番静かに木兎さんが謝った。
「だから…木兎さんが謝るような事は何も…。」
さっきもそう伝えた言葉を繰り返すと、木兎さんがブンブンと音がしそうな程に首を横に振った。
「違うんだ。和奏ちゃんが黒尾君と上手くいかなくて良かったって…思っちゃって…ごめん。今こんな事言われても困るのはわかってるけど…俺、本当に和奏ちゃんの事好きになる…いや、もう好きだ。」
昨日初めて会ったばかりの人。
でも、私はもう知ってしまっている。
この人は嘘をつかない。
「あの…。」
なんて言っていいのか…。
好意として受け取る事は出来ても、応える事は出来ない。
「別に今すぐどぉこぉなんて思ってないけど…とりあえず和奏ちゃんが泣いてるのはほっとけないからハグしていいか?…下心満載だけど。」
最後は冗談めかして笑いながら両手を広げる木兎さん。
涙は止まらないが、思わずつられて笑ってしまう。
「こう言う時は下心は出さないでくださいよ。」
冗談と思わせた提案は、私の返事を聞くなり伸びて来た木兎さんの腕に包まれてから、初めて本気だったんだと気付かされた。
「わかった。」
耳元で低く響いた木兎さんの言葉に体全体の体温が上がるのを感じた。
こんな時に今までで一番本気めかしたトーンを使うなんて…ずるい。