第7章 失恋の乗り越え方
「あの…木兎さん。本当に大丈夫です。来てもらうのも申し訳ないし…。」
知り合って間もないがわかる。
こう言っても、きっと木兎さんは強引に押しかけて来る気がする。
何かしらの言い訳をつけて…。
「嫌だ!俺が和奏ちゃんに会いたくてたまらないから行く。ってか、家の場所教えて。」
何かしらの言い訳や口実なんて、この人には必要ないんだ。
ひねくれ者の黒尾先輩と思わず比較して笑ってしまう。
「笑ってる場合じゃねーぞ!このままだと俺、迷子になるんだけど。」
何を笑ったと思ったのか…。
そうは言っても、本当に家に来られても困る。
「あの…木兎さん。家の近くに公園があるんです。そこでもいいですか?」
わかりやすい大通りからの行き方を伝えると、木兎さんはそこなら10分もあれば着くと言ったので、現地で会うことを約束して電話を切った。
木兎さんって不思議な人だ。
いつの間にか胸の痛みが少し和らいでいるのに気付いた。
木兎さんのペースに圧倒されてるうちに…少しずつ忘れていけるだろうか?
私の浅はかな初恋を。
この失恋の胸の痛みを。
別に恋に落ちる予感とか…そんなのはない。
ただ木兎さんという人物から発せられる温かいオーラに少し癒されたいと思っただけだ。