第7章 失恋の乗り越え方
[何かあった?今から会いに行っていい?]
すぐに返ってくる返信。
きっとこの人ならそう言ってくるだろうと思っていた通りの返信に少し安堵する。
私…こんな時まで打算的に…。
ただ、そう言ってくれた安堵はあるものの、本当に会いたい訳ではない。
ごめんなさい。と画面に打ちかけている最中に、今度は長い振動を感じる。
[木兎 光太郎]
着信だ。
少し様子を見ていたが、切れる気配も無いので通話ボタンを押す。
「もしもし…」
「あっ、和奏ちゃん?大丈夫?」
耳のすぐ近くで聞こえる木兎さんの声。
昨日知り合ったばかりなのに、警戒心を抱かせない。
木兎さんって、そういう人だ。
「大丈夫…です。」
あんな、心配して欲しそうな内容のメールを送った人の返事ではないが、そう答える以外の選択肢を持っていなかった。
「あっ、今嘘ついただろ?大丈夫じゃない時に無理する必要なんてないぞ。俺、今和奏ちゃんの家の方に向かってるから。詳しい場所知らないけど。」
「え…?」
「来るなって言っても行くからな!俺、和奏ちゃんが1人で泣いてんの嫌だし。」
なんでこの人は、昨日会ったばかりの私にここまでしてくれるんだろう。
「俺だったら素のままの和奏ちゃんを好きになれる自信がある!」
先程、ファストフード店で聞いた言葉が蘇る。
今日の事なのに…黒尾先輩の事があったから、ずいぶん昔に感じる。