第7章 失恋の乗り越え方

こんなに辛いものだとは知らなかった。
周りには失恋をしたと言って落ち込んでる友達もいたが、その中の誰も教えてくれなかった。

こんなにも息を吸うのも苦しくて、
黒尾先輩の顔を思い出しただけで、心がビリビリと音を立てて破れるように痛くて、
考えたくないと強く思うのに、そう思う事自体が黒尾先輩の事を考えてしまっている証明で…。
こんなにも1秒1秒過ぎ去るのが遅く感じる物だとは、誰も教えてはくれなかった。

[ブッ]

携帯の振動する音に、ベッドに埋めていた顔を無理やり持ち上げた。

黒尾先輩…？

わかってる。
期待するだけ無駄だ。
黒尾先輩は一度切った女に簡単に連絡を取るほどアホではない。

[木兎 光太郎]

違った…。
ディスプレイに表示された名前を見て、期待しちゃダメと言いながらも、黒尾先輩からであって欲しいと心底願っていた自分に落胆する。

[今日はありがとな！さっきまで一緒だったのに、既に和奏ちゃんに会いたいんだけど。これって禁断症状！？」

明るい絵文字がたくさん入ったメール。
読むだけで直射日光を近距離で浴びたような気分になる。
今の私の気分とは正反対だ。

[私は誰とも会いたくありません。]

返そうか迷ったけど、無視するのも申し訳ないし…。
そして、ほんの少しだけ誰かに失恋した泣き言を言いたい気分だった。
だから、わざわざそんな意味深な言葉を選んで送信ボタンを押したんだ。