第7章 失恋の乗り越え方
side 皐月 和奏
努力が報われない事など、珍しくもない、よくある話で…。
片想いが実らないことも、よくある話で…。
でも、そんな大多数のよくある話は、なんの慰めにもならない。
ただ…心が張り裂けそうに痛い。
黒尾先輩の家から出た途端にしゃがみ込んでしまい、堪えていた涙が堰を切ったように溢れ出した。
黒尾先輩の前では…最後まで笑えていただろうか?
黒尾先輩のよく知ってる皐月 和奏で居れただろうか?
「…皐月?そんなところで…」
何してるの?と続くハズであろう言葉はついに彼の口からは出て来なかった。
「孤爪…君。いつも…タイミングが悪いね。」
きっと私の泣き顔が酷すぎて、言葉が続かなかったんだと思う。
「…大丈夫?」
色々言いたいことはあるだろうけど、孤爪君が選んだのはそんなシンプルな言葉だった。
結果の見えていた彼としては、いちいち質問をするほどの事じゃないんだろう。
「惨敗…。孤爪君に授けられた秘策まで持ち出したのに…本当に…全てがダメ過ぎて…。きっと孤爪君が期待してたような笑い話に仕上がってるよ。…でも、今はちょっと話す気分じゃないから…また今度に期待しててね。」
何とか立ち上がり、フラフラと歩き始めると、
すぐに孤爪君が慌てた様子で声をあげた。
「待ってよ。送る…。その状態で1人で帰らせるわけにいかない。」
黒尾先輩の幼馴染も大変だな。
「そんな尻拭いまで孤爪君の仕事なの?ありがとう。でも…今は本当に1人にして欲しい。」
振り返りもせずに孤爪君にそれだけ伝えると、私は家への道をまっすぐに歩き出した。
孤爪君がどんな表情で私を見送っていたかも知らずに。