第6章 簡単なお別れの伝え方
それからの日々は、特に目新しさのない単調なものだった。
関わろうと意識しなければ、和奏と接する機会なんて元々皆無だ。
たまに学校の廊下ですれ違う時に、髪の色も、服装も元に戻した…俺にとっては新鮮な印象の和奏を見かけるだけで、声はかけない。
研磨との約束が無けりゃ、そっちの方が和奏に似合ってるくらいは言ってやりたいけど…。
それも和奏の強がり混じりの笑顔の会釈にドシャットされて、結局あの日から一度も話していない。
だから、本当に偶然だったんだ。
校門の近くに見慣れたミミズクヘッドを見かけたのは。
また堂々と偵察に来やがったと、文句の1つでも言ってやろうと近付く俺を、小さな影が小走りで抜いていった。
それが和奏だと気付いた時には、木兎が呆れるほど大きく手を振って和奏を出迎えていて、
和奏も和奏で、俺には見せた事ないような笑顔で小さく手を振り返したりしていて…。
2人が仲よさそうに歩いて行く後ろ姿を、
何一つ言葉もかけれないまま見送りながら、
俺は初めて自分の中に何て表現していいかわからない気持ちがある事に気付いた。
やべぇ…今更気付くとか…俺、本気でどうかしてるだろ。
今更、和奏のことを好きかもだなんて。