第6章 簡単なお別れの伝え方
「皐月だよ。」
「は?」
「皐月 和奏だよ。たった一度見に来たバレーの見学で、クロに助けられて一目惚れして…、クロの好みに近付けるようにって必死に見た目変えて…、セフレでもいいから側に居たいとか平気で言い放っちゃうくらいクロに惚れてる…。俺が好きなのは、その皐月 和奏だよ。」
一言も返せないなんてダサいけど…正直ダサいとか、それどころじゃなくて…。
は?
和奏とあの子が同一人物?
研磨の惚れてた…?
俺の好みに合わせて…?
じゃあ、遊び慣れたあの感じとか…?
頭に浮かんでくる疑問達の対応に追いつけない。
ただ、パズルのようにピタッとハマったのは…今までの研磨の態度。
だから、研磨はずっと怒ってたのか。
好みのタイプじゃないからって決めつけて、
好きなはずないって勝手にフィルターにかけて、
だから、俺は大切な事実に気付けなかった…。
「あっ…研磨…わりぃ。俺…気付かなくて。」
気付かずにお前の好きな奴と関係持っちまった。
しかも、遊びで…。
「別にクロは悪くない。皐月が望んだことだし。だから、俺も今まで何も言わなかった。でも…もうクロは皐月には近付かないで。少しでも優しくして、皐月をその気にして、また傷付けたら…今度こそただじゃおかないから。」
研磨はそれだけ言うと、そのまま俺に背を向けて部屋から出て行った。
皐月には近付かないで。か…。
言われなくても、もう関わらねぇよ。