第1章 小さな嘘の始め方
黒尾先輩の情報はすぐに集まった。
3年5組。
バレー部主将。
孤爪君とは幼馴染。
そして、女子から非常に人気がある。
どうやら、体育館に集まっていた女子生徒のほとんどが黒尾先輩目当てのようだ。
そして…女遊びが激しい。
来るもの拒まず、去る者追わず…とは彼の為の言葉のようで、特定の彼女を作らず遊びまくっているらしい。
「いや、黒尾先輩は無理でしょ。傷付くだけなの目に見えてるよね?」
「あの人って…彼女なんて、遊べなくなるだけだから要らないって公言してる人でしょ?」
「そもそも和奏は先輩のタイプじゃないよ。連れて歩いてるのは、バレー部の見学に来てた女子達みたいな…いわゆるチャラそうなタイプだよ?」
別に何を聞いても、私の中での黒尾先輩の評価が下がる事は無かった。
誰かを好きになるなんて、初めての経験だけど…恋は盲目だとは上手い事言ったものだ。
確かに、黒尾先輩の好みのタイプを変える事は出来ないけど、
私が先輩の好みに合わせる事は出来るだろう。
スカートを短くした。
髪の毛の色も明るくした。
化粧も前より濃くなった。
やっと見つけた初恋を、遠くから眺めているだけで終わらせるなんて、絶対に嫌だったんだ。