第6章 簡単なお別れの伝え方
「失望しましたか?」
和奏の笑顔を見て気付く。
冗談で…言ってるわけじゃねぇ。
そして…俺の答えも最初っからわかってやがる…。
じゃあ、何のためにわざわざこんな事を言うのだろう?
「いや、失望はしねぇけど…、わかってると思うけど、俺誰とも付き合う気無いから…。」
どんだけ和奏の告白の理由を考えたって、
例え、その答えがわかったとしたって…、
俺が誰とも付き合う気が無いって事実はかわらねぇし。
「はい。知ってます!」
だから、最後までそんな笑顔で俺を混乱させんじゃねぇよ。
「和奏がそういう気持ちなら、もう会うつもりもねぇ。」
いつも言ってるお決まりのワード。
これを伝えるとき、相手の女の反応は限られている。
泣いてるか、怒ってるか。
「黒尾先輩はそう言うだろうと思ってました。今まで楽しかったです!ありがとうございました。」
じゃあ、私は失礼します。って、天気の話でもしてたかの様にあっさりと出て行く和奏。
何で、お前は笑顔なんだよ。
自分で切った女の事なんて、普通興味ないだろ。
自分にそう言い聞かせるのに、思わず窓辺に近づき、カーテンを少し開けて玄関から出て来る和奏の様子を伺う。
これで見納めかもしれないから…って、自分に言い訳しながら。