第6章 簡単なお別れの伝え方
どこが…笑顔だよ…。
そこには玄関から出た途端に、涙ぐみしゃがみ込んでしまった和奏が居た。
彼女に感じていた仲間意識。
和奏も何かの役割を演じているのだろうと思っていた。
今、あそこで涙している彼女が、本物の和奏なら…。
さっき、俺の前で見せた笑顔が強がりなら…抱きしめてやりてぇ。
そんな事が下手な期待を植え付けるだけだと知っているから、和奏を追いかけたりはしない。
でも…強がってんじゃねぇよ。
俺が見て来た和奏は…どこからが本音で、どこからが強がりだったんだろう。
それを言うなら…俺はどれだけ本音であいつと向き合っただろう。
俺はずっと演じ続けていた。
和奏が俺に求めていたのは、どんな役割かもわかってなかったくせに。
「だせぇ。」
これ以上泣いている和奏を見ているのは、
泣かせてしまった自分がダサ過ぎて耐えられなかった。
カーテンから手を外せば、布切れ1枚で見えなくなる和奏の姿。
こうやって…見ないフリして来た事がどれくらいあるだろう?
知ってしまうとカッコつかないからって、知らないフリをし続けて来た事…どれくらいあるだろう。