第6章 簡単なお別れの伝え方
side 黒尾 鉄朗
珍しく和奏から連絡が来たから、
木兎のやつ、フラれてんじゃねぇか。って。
ダッセーとか余裕こいてたら、今まで一緒だったとか、当たり前の様な顔して言うから、今日は序盤からペース乱されまくり。
今だって、キスしようとしてる俺に、清々しい笑顔でとんでもない事を言って来た。
「黒尾先輩。私、今日はセックスしに来た訳じゃないんです。…私、黒尾先輩が好きです。」
たぶん…今まで見た表情の中で一番俺好み。
あまりにも意表を突いた発言に、考えなければいけない事は無視して、和奏の笑顔に見惚れてた。
「えっと…?」
和奏の言葉を俺の中で繰り返してみるけど、どう考えたってあっさり飲み込める言葉じゃない。
「…せっかくの告白を…聞き逃したんですか?」
和奏は相変わらずの笑顔で、でもどこか不満そうな口調でそう言った。
やっぱり、俺の聞き間違いではなかったのか。
ひとまずキスをする直前の超至近距離から離れる。
腕一本分の距離感。
「いや、聞こえちゃいたけど…意外で。和奏がそういう事言い出すと思わなかったから。」
彼氏なんて面倒なだけだと言い張っていた和奏は、俺に対しても無駄にベタつく事を拒否していた。
こいつは俺と同じで誰も好きにならないんだろうなぁ。
そんな事を思って、仲間意識さえ芽生えていた。
そんな相手から好きだと言われたのだ。
少しくらい驚いても許されるだろう。