第5章 ヤキモチの引き出し方
さっきの告白紛いの事を全て信じたわけじゃない。
でも、この人の言葉は信頼出来ると思わせる力があった。
それに比べて…とっておきの駄策…。
孤爪君は私の作戦のダメな部分に最初から気付いていたのだろう。
でも…この作戦じゃないと成し遂げれなかったことも確かにあるだろう。
黒尾先輩に私の存在に気付いてもらう事。
だから…後悔しちゃいけない。
「なんか、笑える話しようぜ!」
責任を感じて明るい話題を次々と出してくる木兎さんに合わせて笑いながら、ずっと別のことを考えていた。
「あのね…クロを振り向かせる秘策が本当にあるとしたら、それは素直に気持ちを伝える事だと思うけどね。」
そう言った孤爪君の言葉だ。
それから、何を話したかはほとんど覚えていないが、20分ほどお喋りをして、家まで送ると言い張る木兎さんを丁重にお断りして別れた。
[今から会えませんか?]
木兎さんと別れてすぐに取り出した携帯でメッセージを綴る。
[家で待ってる。]
すぐに帰ってくる飾りっ気のない言葉が手元に届いたのを確認して深呼吸をした。
そして自宅とは反対の黒尾先輩の家へと足を進めた。