第5章 ヤキモチの引き出し方
あぁ、今の言い方はダメだ。
馬鹿にしてる感じが完璧に伝わってしまう言い方をしてしまった。
案の定、怒りが頂点に達した先輩の1人が手を振り上げたのが見えた。
これは避けれない…。
呼び出された時から想定はしてたものの、別に人に叩かれるような趣味はない。
目を瞑り、身をすくめる。
「ちょっと、たんま!!」
その時、場違いに明るい声が響く。
誰か…来たのだとゆっくり目を開けると、先輩達もそちらを見て固まっていた。
「あ…れ?えっと…確か、木兎さん??」
昨日初めて会ったばかりのその人物を呼ぶと、ニコニコしながらこちらに歩みを進めてくる。
なぜ音駒に?
そうは考えたが、見間違いでは無いだろう。
やっぱり木兎さんだ。
「やっと見つけた!和奏ちゃん!こんな校舎裏に居たら見つからないハズだ。」
えっ…梟谷の木兎君だよ。先輩達が囁いているのが聞こえてくる。
黒尾先輩を追い掛けてバレー見学をしているから…ライバル校の木兎さんの事も知っているんだろうか?
何だか、この状況について行けず、一言も喋れない。
「ねぇ俺、和奏ちゃんに用事があるんだけど。借りてもいいよね?」
木兎さんがそう言うと、先輩達は蜘蛛の子を散らすように立ち去った。
なんだ…これ?
「良かった!和奏ちゃんが無事で。」
なんだ…この想定外の状況は…。