第5章 ヤキモチの引き出し方
孤爪君は本当にわかっていない。
穴埋め要員が気持ちを伝えたところで、穴埋め要員のまま…いや、黒尾先輩の場合は穴埋め要員以下に格下げにされる可能性が大きい。
でも…。
もう一度手のひらを見つめる。
でも…ちゃんと黒尾先輩のヤキモチを引き出せれば。
少しでも、俺の物だって独占欲が芽生えれば…。
きっと、私にも可能性がある。
告白するならその時だ。
って、教室で1人で手のひらを見つめてる私って…孤爪君ではないけど不気味かも。
はっと正気に戻って、バタバタと帰宅の用意を進める。
「ねぇ、皐月さん?」
ん?
入り口の方から声を掛けられ、聞きなれない声に顔を上げる。
聞きなれない声だけど…顔はよく見慣れている。
確か、黒尾先輩の取り巻きの3年生達だ。
1,2,3…4人。
全員見覚えがある。
「ちょっとお話ししたい事があるんだけどぉ。」
何の用事かなんて、聞かなくてもわかる。
それよりも…。
「今時、まだこんな呼び出しとかあるんですねぇ。」
そっちの方がびっくりだ。
「なっ…バカにしてんの!?」
いちいちそんな事聞かれなくても、バカにしているに決まっている。
けど、そんな事をいちいち言って、既に変な雰囲気になっている教室をこれ以上ザワつさせる必要はない。