第5章 ヤキモチの引き出し方
side 皐月 和奏
昨日のデート…デートでいいんだよね?
昨日のデートはとにかく楽しかった!
そりゃ、穴埋め要員に呼び出された事は少しショックだったけど…
黒尾先輩の木兎さんに対するあの態度は、ヤキモチで間違いない…ハズ。
あの時繋がれた手のひらを眺めて、思わずニヤけてしまう。
「ねぇ、1人でニヤニヤしてるの…不気味なんだけど。」
教室の斜め前の席から孤爪君が呆れ顔で言ってくる。
本当に…いちいち煩い。
「不気味でもいいんですー。それより早く部活行かないと黒尾先輩に迷惑かかるんだけど。」
「別にクロが迷惑したって構わないけど…。ってか、皐月こそ、クロの彼女気取りの発言やめた方がいいよ。」
淡々と失礼な事を言い続ける孤爪君が席を立つ気配はない。
「まぁ、確かに今は違うけど…まぁ、今に見ててよ。とっておきの秘策を思い付いたから!」
「きっと、とっておきの駄策なんだろうね。楽しみにしてるよ、失敗談。」
孤爪君が荷物を持って立ち上がる。
「あっ、言い逃げ!?」
孤爪君はいつも冷静だけど、ふとした拍子に挑発に乗ってくる事がある。
それが楽しみで言い合いをしていると言う節もある。
まぁ、基本的には向こうが突っかかってくるからだけど。
扉のところで立ち止まった孤爪君を見る。
「あのね…クロを振り向かせる秘策が本当にあるとしたら、それは素直に気持ちを伝える事だと思うけどね。」
今度こそ言い逃げを決め込んで、すぐに教室を出ていった。