第3章 気を引く為の駆け引きのやり方
「おい、木兎。人の縄張りで盛ってんじゃねぇよ。赤葦もしっかりリードで繋いどけよ。」
グッと黒尾先輩が私の体を引き戻す。
さっきまで黒尾先輩とのデートに割り込んで来た、この梟谷のコンビを邪魔だとしか思って居なかったが…
もしかしてグッドジョブ!?
黒尾先輩が…ヤキモチを妬いてくれてる。
「すみません。木兎さんも…誰彼構わず急に誘うのはやめて下さい。」
赤葦と呼ばれる男の人が、黒尾先輩と私に向かって頭を下げる。
「誰彼構わずってなんだよー!可愛い子限定だろ!赤葦だって男ばっかりで飯食うより、可愛い子がいた方がいいくせに。むっつりスケベ!」
何か…論点がズレてる…?
木兎さんのキャラクターが若干掴めてきた。
もし、上手く扱えれば…
黒尾先輩のヤキモチを引き出す当て馬に最適なのでは…。
いやいや、一瞬浮かんだ考えを自分でも笑い飛ばす。
「ってか、和奏は俺と映画を観に行くところなので、ミミズクヘッドはお呼びじゃありませーん。」
行くぞ。と私の右手に黒尾先輩の左手が絡んだ。
先程、自分の中で冗談にしようと思った考えを再び引き出す。
木兎さんを使って、黒尾先輩のヤキモチを引き出す方法だ。
悪い考えだとは思う。
でも…黒尾先輩のヤキモチはこんなにも甘美だ。
繋いだ右手が熱い。