第3章 気を引く為の駆け引きのやり方
「黒尾君の彼女ー?」
そうです!とか、言ってみたい。
「違いますー。仲の良い後輩ですー。」
もちろん、私の願望は黒尾先輩にドシャットされる。
でも…仲のいいと言われた…。
そんな事で嬉しくなるんだから、本当にどうかしてる。
いつかは黒尾先輩の一番になりたい。
その為に、ずっと頑張っているのだから、
仲の良い後輩で満足してはダメなのに。
「黒尾先輩の仲の良い後輩の皐月 和奏です。」
ペコっと頭を下げると木兎さんが先ほどより更にマジマジとこちらを覗き込んでくる。
「和奏ちゃんっての?可愛い!俺、木兎 光太郎。」
いきなり下の名前か…とは思ったが、
人懐っこい笑顔は訂正を許さない。
よろしくっと手を差し出されたので、
思わず握り返すと、予想外に体を引き寄せられる。
「これなら何か食いに行かない?」
超近距離から相変わらず人懐っこい声が降り注ぐ。
予想外の出来事に何の反応も出来ず、
助けを求めるつもりで黒尾先輩に視線を送る。