第3章 気を引く為の駆け引きのやり方
「んで、その彼女さんとどんな映画を観る予定だったんですかー?」
大好きな人との憧れの初デートで、
他の女の観たかった映画を観るなんて…滑稽だ。
「コレー。」
黒尾先輩がチケットをこちらに差し出す。
「これは…また…。黒尾先輩…よく付き合うつもりでしたね。この手のラブストーリーとか…全く興味ないでしょ?」
今話題の純愛ストーリーだ。
クラスの女の子達の話題になっていたので、タイトルくらいは知っている。
「僕は紳士なので、女性の要望にはお応えするのが基本なんですー。」
ふざけると敬語になる黒尾先輩。
自分でも、そんなのエセ紳士だと気付いているのだろう。
嫌だな…。
他の女の子の為に紳士ぶってる黒尾先輩とデートするのは。
「じゃあ、私の要望も聞いてくれますか?チケット無駄になっちゃいますが…この映画じゃなくて、別のやつが観たいです!」
私も黒尾先輩も楽しめそうなアクション映画のタイトルを上げる。
黒尾先輩と映画デートが出来たら…と、先日妄想したのが、まさか役に立つとは思わなかった。
黒尾先輩が嬉しそうに笑って、頭を撫でてくれる。
私にとっての最大のご褒美だ。
「あー、黒尾くーん!おーい!」
映画館までもう少し…という所で、思わぬ方向から声を掛けられた。
黒尾先輩に負けず劣らず長身の2人組が近付いてくる。
「げっ…木兎。」
「ぼくと…?」
黒尾先輩の方を伺うと、あぁ。と説明してくれる。
「梟谷のバレー部。エースとセッターだよ。あの派手な髪型の方が木兎。目つきの悪い方が赤葦。」
「ちょっと、黒尾くんー!俺のこと紹介するなら、ちゃんと全国5本の指に入るって事も伝えてよ。」
「木兎さん、それじゃ何の全国5本の指か全くわかりませんよ。」
バレー関係の人達か。
通りで…壁みたい。。。
180cmは余裕でありそうな3人を見上げると、
木兎と紹介された男の人が、グイッとこちらを覗き込んだ。