第12章 君に素直になる方法
「嘘だよ。もっと見せろ。泣き虫な和奏。」
もっと、色んな和奏を知りたい。
「黒尾先輩…。あの…聞き間違いじゃないですよね…?」
未だに混乱状態でワタワタしている和奏が愛おしい。
「何度でも言ってやるよ。和奏、好きだ。」
その言葉を噛みしめるように、和奏がギューっと俺の事背中に手を回した。
クソ…。
こんな事で幸せだとか…悪くねぇ。
結構な時間、そうやって抱き合っていた。
沈黙を破ったのは和奏の方だった。
「あの…黒尾先輩…私、黒尾先輩が思っているような人間では無くて…。」
以前関係があった時に、自らを作っていた事を言っているのだろう。
でも、そんなの…初めから気付いていた。
和奏の演技に見落として来た大切な事もあっただろうけど…今後は見落とさない。
「和奏はいつも、俺の前で強がってたから…だから、俺は和奏の事、まだよく知らないのかもしれない。でも、誰より側でお前の事知りたいって思ってる。強がってて、愛想のいい和奏ばっかりじゃなくて、気が強くて、でも泣き虫で、真っ直ぐで…俺の思い通りになんてなってくれない…そんな和奏が好きだ。」
「私…本当の自分は黒尾先輩に嫌われるって思ってました。」
一旦落ち着いていた和奏が再び涙声になる。
本当に泣き虫なんだな。
馬鹿な勘違いさえも可愛く思える。