第12章 君に素直になる方法
「んで…ご用件はなんでしょうか?」
前回とは対照的に距離感がある。
和奏は机の椅子に、俺は部屋の入り口に立ったままだ。
怯えるような和奏の態度に、木兎の言葉が嘘だったんじゃないかと思えてくる。
こいつがまだ俺の事好きとか…。
でも、和奏が木兎と付き合わない事を選んだ今、俺にこの気持ちを伝えない理由なんてない。
「言い忘れた事伝えに来たって言っただろ?」
コクリと頷く、神妙な顔の和奏。
難しい物理の本でも読んでいるような表情だ。
こいつ、マジで何の話だと思ってんだよ。
「すげぇ今更だけどさ…俺、和奏の事が好きだ。」
もっと気の利いた言い方があったのかもしれない。
でも、口から出たのはそんなシンプルな言葉だった。
和奏の方も、本当に予想外だったのだろう。
目を大きく見開いた後に、その瞳からポロポロと涙が溢れてくる。
案外…泣き虫なんだな。
でも、その涙に木兎の言ってた事が嘘じゃなかったとわかり、安心する。
ゆっくりと和奏に近付いて、指で涙を数滴拭い取る。
「泣かれるとショックなんですけど。」
「あっ、すいません。…驚いてしまって…。」
慌てている和奏が可愛くて、そのままギュッと胸元に抱き寄せた。