第12章 君に素直になる方法
部活終わりなので、そこそこ遅い時間だが、そんな事気にかかる余裕なんて無かった。
ただ、一刻も早く和奏に会いたくて、あいつの家までの道をひた走った。
プルルルルと耳元でコール音が鳴っている。
和奏の家の前に着いてから発信した電話だ。
繋がるまでの数秒さえ、もどかしい。
「もしもし?」
聞こえた和奏の声に、少し警戒心が混ざっている。
誰からの電話かわかってないのだろう。
この前まで…番号消さずに登録してたくせに。
何で今更消してんだよ。
勝手に…終わらせてんじゃねぇよ。
「和奏?今、出れるか?」
「え?黒尾先輩ですか?」
「…そうだけど。」
「え…?なんで??」
なんでは…こっちのセリフだ。
なんで…俺には本当のお前を見せてくれないんだよ。
「この前、伝え忘れた事があったから来た。会って話したいんだけど。」
1人の女相手にこんなに必死な俺…。
研磨じゃねぇけど…まさに青春真っ只中じゃねぇか。
「あの…えっと…よかったら、上がって下さい。今日も家族居ないし…、あっ、そういう意味じゃありません。…黒尾先輩が嫌で無ければ。」
そういう意味じゃありません。は、この前の事を言っているのだろう。
和奏の慌てぶりに、こちらにも少し余裕が生まれる。
「おう。じゃあ、お邪魔さしてもらうわ。」
迎えに降りて来てくれた和奏に促されて、1週間ぶりの和奏の部屋へ通された。