第4章 くるぶし/田仁志
偶然ふたりを見かけただけらしかったけれど、なぜわざわざおとなのアメリカーなどという面倒な相手を打ちのめしたのか、理由はいまでも、てんでわからない。
慧の足さばきは特殊らしく、不可思議な動きを避けきれなかったそいつはそのままあっさり地面に伏したのだった。
―――あたしの夕飯。
そいつをかわいそうにおもいつつも、じっさいあたしのおもいを占めていたのはほとんど、今晩そいつに買ってもらうはずだったラフテーのことだった。お母さんごめん、ラフテーはまた今度になるよ。
それでも、笑いが止まらないほど、スカッとした。
あたしの腹は鳴る。なのに、その日、もう慧のことがすきになっていたのだとおもう。
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「アメリカー」はうちなーぐちで外国人のことです