第12章 ひるひなかの/仁王
「ちがうな。空じゃない。まちは確かに街を歩いとったぜよ」
俺が妙な自信をもつので、まちは笑った。
あのとき、からだから解放されて、ふわりとおおきくなっていたのだろうか。俺がおもうに、宇宙のどこかにある天国というところでは、人間はみなあのサイズがふつうなのかもしれない。空を飛んでいるかのような鳥の俯瞰だ。
そしてふと、包帯のしたのまちから笑顔が消えた。
「…そうね、わたし、雅治を見た。ぼんやり空を見上げて、肩から鞄が落ちそうになってたわね」
「コーラも、取り落とすかとおもった」
「そうそう、持ってた」
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『不安の種』の「Ω11 人さらい」を見たとき、谷山浩子「ガラスの巨人」を思い出しました。その透明感を再現したくて、アスファルトの住宅街に白髪の仁王を歩かせることにしたのです