第11章 類は友を呼び、変態は更なる変態を呼んだ/海堂
「海堂、アレがないか 紙を切るヤツ」
なにやら書類をもった乾先輩が、きょうもまったく表情の読めない顔で声をかけてきた。
「ハサミじゃないんスか」
「ちがうんだ…ひとも切れるヤツ」
「ひとを殺める道具は持ってないっス…」
「あっ、カッターだ」
「ひとを切らないでください」
データマンなのにカッターの名前を度忘れすることがあるんだ…とおもいつつ俺は鞄のペンケースからカッターを取り出し、先輩に差し出す。そのとき先輩は礼をいおうとして微笑んだ顔のままに「指、どうしたんだ」と笑った。
「…その、ですね…まちのヤツに描かれたんス」
「ほう。かわいいな。ちゃんと口は開くのか」
「開きません!!!!」
俺の左ひとさし指には、ちいさく油性ペンで目付きのわるい顔が描かれているのだった。まさかそのカッターでおれの指をパペット人形のようにこじ開けるというのか―――
「よし」
しかし、先輩はさっきのペンケースから俺のペンを取り出し、じぶんの左ひとさし指に、メガネと口を描いていた。
こちらに向けられたその顔はやはり本人に似て、なにをかんがえているのかわからない。
「あ、似てますね」
「ゆび治だ」
「ゆ、ゆびはる」
「海堂のは ゆびる だな」
「語感ひどいですね?!」
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
「聞いてもいいですか」
「なんですか」
「なんでゆびるくんは指人形遊びに付き合ってくれるんですか」
「じぶんから始めといて!なんなんスか!先輩が楽しければ断る理由もねぇしやりますよ」
「いまおもったが…おまえまちにとってほんとうにいい彼氏だろうな」
俺としては、乾先輩がすこしまちと似ているのだとおもうと、かなり複雑なのだが。
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またも堀宮パロ
表情が読めないのはお互いさまだとおもいます