第10章 とけないのろい/謙也
「忍足やんな」
「おう、忍足や、わかっとるで」
なぜか謙也の背中におおきく「 忍 足 」と書いた紙が貼ってあるので、あたしは銀さんとともに頷きあった。
なにごとかと、謙也が振り向く。
「忍足やけど?!なんで急に名字でよぶねん寂しいわ」
心外そうな顔の謙也をよそに、銀さんはつぶやく。「なぜ『スピードスター』とかにせえへんのや」
「あたしもおもったわ。なんでよりによって『忍足』やねん」
「よりによって忍足…?! なんで俺の名字急に貶されとん! つうか名字をスピードスターにするわけないやん代々スピードスターかうちの家は!」
「いやそういうことやない」
「えっ」
「ちゃうねん」
「どうちゃうねんて!急にマジレスやめれや!」
「ふつう『忍足』やなくて『アホ』とかにするやんな」
「あ、アホぉ……?!」
「せやな。『天才』とかもな」
「天才は俺の親戚の異名やからアカンで、ゆうとくけど!銀さんもまちも、おまえらひとの名字で遊ぶなや!」
「すまんな」
「ごめん」
「だから急に冷めるのやめーやホンマ寂しいやろ!」
すると、フラフラと、きょうも私服の千歳が現れた。
「どげんしたと謙也、そりゃあおまえは忍足ばい」
「お、忍足やけど!」
「なんで『天才』とかにせんとね?」
「おんなじことゆうとる!!」
「背中背中」
「せなかあ?」
ペリッ、と千歳が紙を剥がして忍足謙也に見せてやる。その文字を見て忍足謙也は怒ろうとするものの、じっさいべつに悪口でもなく、ただの本名だったので、「せ、せやな」た、なんともいえない囁き声を出しただけだった。
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なにこれ
堀宮ネタをやったつもりでした。あなたなら謙也の背中になんと書きますか