第9章 花かんむり/乾
「…ポケットがあるなら、手を繋ぐこともないな」
「え うん」
「それならこうだな」
乾くんはみずからのマフラーを解いて立ち止まると、わたしに、ふわりとそれを被せた。
一周させるとうしろで結ぶ。
「うへへ生温い」
長いそのマフラーにわたしは顔を埋めてみる、そういえばわたしたち恋人だった、と思い出すと笑ってしまいながら。
視界はスカイブルーで、したから照らされているかのように、目覚ましい。曇り空のもと、わたしだけに空が降りてきたようだった。
「温かいといってくれ」
「うへへ…ところで、わたしいま柳蓮二とお揃いのマフラーなのね」
「!」
やっぱりダメだ、返しなさい、と慌てて手を伸ばすマフラーの持ち主から、わたしはひらりと身をかわして、いった。
「柳蓮二のお母さんから、もうひとつもらってよ」
「さ、三人でお揃いにするというのか!それはダメだ」
「でも、お母さんが作りすぎるなら、たぶん柳一家全員このマフラーをしてるかもしれないわね」
「三人どころじゃないのか…!!」
「そうしたらわたしたち、柳一家とどんな関係ってことになるのかしら」
「マフラーをお揃いにする関係…意味がわからないな」
☆
柳家公認カップル
しかし柳家に認められるからどうだというのか