【イケシリ】sweet dreams*2【短編集】
第2章 放課後の罠 ーアーサーー
「俺さぁ、実はヴァンパイアなんだよねー。」
「え?」
手際よく本を戻しながらアーサーが言った。
「だから……、こんな時間に二人きりで誰もいない図書館なんて、血が欲しくてたまらなくなる……。」
急に私の方へ歩み寄り、書棚を背に私を追い詰めた。
「ちょっ、アーサー?!」
首筋に唇が触れ、私が体を震わせた時……
「っていうお話。」
さっきの小説の話だと気づくのに時間がかかった。
アーサーは身体を離すと、手に持っていた最後の1冊を私のすぐ横の棚に収める。
「ドキドキした?」
したよ!したした!でも口の中がカラカラで言葉が出ない。
「いつもは推理物が得意だけど、今回のは恋の物語。」
「ハッピーエンド?」
「さぁ、それはキミ次第、かな。」
やっとのことで口を開いた私に、意味深な言葉が返ってきた。
首をかしげる私を見てアーサーが続ける。
「届けてくれたファイル、俺が間違えて出したって本気で思ってる?