【イケシリ】sweet dreams*2【短編集】
第2章 放課後の罠 ーアーサーー
「キミとこうやって二人きりになるためにわざと混ぜた、って言ったら?」
「それは……、」
加速する鼓動を感じながら冷静を装うけれど、心に浮かんだ期待はさすがに簡単には口にできない。
「ちょっとくらい期待して欲しかったなー、なんて。」
そう言ってアーサーは目を細めた。
期待……して、いいの?
「もう……アーサーはいつもどこまで本気で言ってるのかわかんないから。」
「わからない?ヒントはたくさんあげたつもりだけど。
ほんとは、もうわかってるんでしょ?推理してみて、俺の気持ち。」
アーサーの気持ち……。
もしかして、もしかしたら……。
「アーサーも私のことっ…… 」
最後まで言う前に唇が塞がった。
「ん……っ 」
言えなかった私の言葉の答え合わせをするようにアーサーの熱が忍び込み、身体の奥が甘く疼く。
こんなの……、こんなところでダメなのに。
頭でわかっていても、拒めない。
深く絡みあうキスにつたなく応えているうちに、アーサーの手はスカートの裾に伸びた。
「……っは…待って、ここ、学校だしっ 」
唇が離れた束の間、慌てて胸を押し返す。
「そんなやらしー顔して説得力ないけど……そうだね、まずは清く正しい男女交際の第一歩?ってことで、はい。」
アーサーは私に手を差し出した。
「一緒に帰ろ。」
「待って、こ、交際?!」
「えー、だって、『アーサーも』って言ったでしょ?」
しまった!と思うもののもう手遅れだ。
恥ずかしくて、顔から火が出る思いでいるとアーサーがゆっくりと告げる。
「俺も、のこと、好きだから。」
そして柔らかく笑うと、私の手をぎゅっと握った。
「まぁ俺、健全な男子高校生だから、いつまで清く正しい交際ができるかわかんないけど。」
そんな軽口も、さりげなく恋人繋ぎに握り直された手が気になって頭に入ってこない。
「これからもっと、の色んなこと教えてね。」
こうして私のいつもの放課後は、いつもの放課後じゃなくなったのだった。
帰り道で貸してもらうことになったアーサーの小説は、時を越えて迷い込んだお屋敷でヴァンパイアと出会う女の子の恋のお話。
あなたがもうすぐ扉を開く、もう1つの物語……。
―――アーサー本編配信まであと少し。
2017.11.09up