【イケシリ】sweet dreams*2【短編集】
第3章 放課後の罠(R18エンド)—アーサー—
「俺さぁ、実はヴァンパイアなんだよねー。」
「え?」
手際よく本を戻しながらアーサーが言った。
「だから……、こんな時間に二人きりで誰もいない図書館なんて、血が欲しくてたまらなくなる……。」
急に私の方へ歩み寄り、書棚を背に私を追い詰めた。
「ちょっ、アーサー?!」
首筋に唇が触れ、私が体を震わせた時……
「っていうお話。」
さっきの小説の話だと気づくのに少し時間がかかった。
アーサーは身体を離すと、手に持っていた最後の1冊を私のすぐ横の棚に収める。
「ドキドキした?」
したよ!したした!でも口の中がカラカラで言葉が出ない。
「いつもは推理物が得意だけど、今回のは恋の物語。」
「ハッピーエンド?」
「さぁ、それはキミ次第、かな。」
やっとのことで口を開いた私に、意味深な言葉が返ってきた。
首をかしげる私を見てアーサーが続ける。
「届けてくれたファイル、俺が間違えて出したって本気で思ってる?
キミとこうやって二人きりになるためにわざと混ぜた、って言ったら?」
「それは……」
加速する鼓動を感じながら冷静を装うけれど、心に浮かんだ期待はさすがに簡単には口にできない。
「ちょっとくらい期待して欲しかったなー、なんて。」
そう言ってアーサーは目を細めた。
期待……して、いいの?
「もう……アーサーはいつもどこまで本気で言ってるのかわかんないから。」
「わからない?ヒントはたくさんあげたつもりだけど。
ほんとは、もうわかってるんでしょ?推理してみて、俺の気持ち。」
アーサーの気持ち……。
もしかして、もしかしたら……。
「アーサーも私のことっ 」
最後まで言う前に唇が塞がった。
「ん……っ 」
言えなかった私の言葉の答え合わせをするようにアーサーの熱が忍び込み、身体の奥が甘く疼く。
アーサーの手が制服のブラウスの上を滑る。
こんなところで、ダメだけど、ダメなのに……。
図書室の扉の前に『閉館中』とぶら下げられた札が頭をよぎった。
拒まなくても大丈夫だという理由を探している自分がいる。
でも、こんな風に簡単に許したら軽い女だって思われるかなとか、そもそもアーサーにとって遊びなのかなとか……
短いあいだに色んな感情が渦巻いて、でも結局アーサーにこうやって触れられるのが嬉しくて、されるがままになってしまう。