【イケシリ】sweet dreams*2【短編集】
第3章 放課後の罠(R18エンド)—アーサー—
空が夕暮れの赤に染まる頃。
グラウンドからは応援団の練習する掛け声が聞こえ、音楽部の楽器の音も遠く聞こえてくる。
そんないつもの放課後。
「よし、こんなところかな。」
「うん。」
今日は日直だった。
一緒に当番だったのは隣の席のアーサー。
黒板消しや簡単な掃除を終えて、あとは集めたクラスメートのノートを職員室に持っていくだけだ。
2人きりの時間もあと少しで終わっちゃうんだなと、アーサーに淡い恋心を抱いている私は少し寂しい気持ちになる。
「悪いんだけど、俺文芸部の図書館当番と被っちゃっててさ、ノート一人で持って行ってもらってもいいー?」
「うん、いいよ。大変だね。」
なんだ、あと少しどころかもう終わりか……。
「名残惜しい?」
見透かされたようで一瞬ドキッとするけれど、アーサーはいつもこういう感じ。
特に深い意味なんてないんだろう。
「そんなわけないでしよ。」
「なんだー残念。俺は名残惜しいけどー。じゃ、またね。」
私の気持ちなんて知らないアーサーは、手を振って行ってしまった。
「これ、違うの混ざってるぞ。」
職員室にノートの束を届けると、受け取った先生からファイルを返された。
(アーサーだ。)
隅に名前が書いてあり、原稿用紙のようなものがはさんである。
「まだ校内にいると思うので、返しておきます。」
と真面目に言いつつ、またアーサーのところへいく口実ができて少し嬉しいというのが本音。
普段あまり近寄らない、校舎の端にある図書館へ向かった。
『閉館中』
扉にかかる札はそう書いてあったけれど、多分中で後片付けをしてるはず。
取手に手をかけて、ガラリと開けてみた。
「アーサー、いる?」
「はいはーい?あ、じゃん。どーしたの?」
「これ、提出物に混ざってたよ。」
「ほんとだこれ俺の。わざわざ持ってきてくれるなんて優しー。」
「小説書いてるの?」
「一応、文芸部だしね。」
「どんなお話?」
「気になる?じゃあ、これからそこの返却図書を棚に戻しに行くから作業しながら話してあげるよー。ついてきて。」
私は言われるまま、本を抱えて歩くアーサーの後ろをついていった。