第3章 友情か
「先生、今スッピン?」
「あ…はい。」
「“お母さん”そっくりだね。」
そう佐久間さんは笑いながら、出窓に置いてあった写真たてを指差した。
それは故郷の桜を背景に、私と母が並んでいる写真だ。
初めて会ったあの日も、佐久間さんはこの写真を眺めていた。
「俺もシャワー浴びていい?」
「あっ…はい。」
唐突に母に似ていると言われ、返す言葉を模索していると、佐久間さんはそう言ってゆっくりと立ち上がった。
呆然と立ち尽くす私の横をすり抜け、バスルームへと向かう。
すっかりタイミングを逃してしまった。
ただ確認をしたかっただけ。
しかし、改めて会話を始めるにはあまりにも恥ずかしい内容だ。
「じゃあ、借りるね。」
脱衣室のドアが閉まる。
このまま曖昧になっていくのは気持ちが悪くすっきりしないが、何もなかった事は確かだ。
もう改めて聞く必要もないだろう。
それよりも、新しいバスタオルを出しておかなければ。
そう思い、脱衣室のドアに手を掛けようとしたその時だった。