第3章 友情か
佐久間さんは立ち上がると、戸惑う私を横目にキッチンの戸棚からコップを2つ取り出した。
「30分だけ付き合ってよ。」
そう言って、少年のような無邪気な笑顔を見せる。
相変わらずマイペースな人だ。
それでいて、邪気がない。
この人となら…“間違い”など起こりようがないだろう。
そんな事すら思わせてしまうのだか、佐久間さんは本当に不思議な魅力を持っている人だ。
私は佐久間さんからコップを受け取った。
そもそもお酒ならすでに飲んでいる。
顔にはあまり出ない方だとは思っていたが、佐久間さんの言うとおり、今日はとても気分が良い。
せっかくこうして2ヶ月振りに会えたのだから、一杯くらいは付き合いたい。
「…少しだけなら。」
そう言った私に佐久間さんは「ありがとう。」と優しく微笑む。
『のどぐろ』が焼き上がるのを待たずして、私達は日本酒で乾杯をした。