第3章 友情か
「先生はこんな時間まで仕事?」
「いえ…同僚と飲んでたんです。」
「へぇ、お酒強いの?」
「…弱くはないと思いますけど。」
受け取った『のどぐろ』の一夜干しをグリルで焼き初める。
パチパチと油の跳ねる音が聞こえた。
時刻は午前0時を回っていた。
まさかこんな深夜に魚を焼く事になるなんてと、思わず笑いがこみ上げた。
「先生、今日は何だか楽しそうだね?」
「…え?」
「表情がさ。」
「そうですか?」
「うん。」
「お酒のせいですかね。」
そう照れながら笑うと、佐久間さんはテーブルの上に置いてあった日本酒を手に取った。
「じゃあ、少しだけ付き合ってよ。」
「今からですか?」
「そう、今から。」
食事をするだけならまだしも、二人でお酒を飲む事には少し抵抗があった。
意識をしている訳では無いが、私達は一応男と女だ。
お酒の勢いで何か“間違い”があったとしてもおかしくはない。