第2章 高校教師
私の仕事は高校の数学教師だ。
今年で3年目になる。
教師になる事が子供の頃からの夢だった…という訳ではない。
私には夢がない。
それが悪い事だとは思わない。
確かに子供の頃はケーキ屋さんになりたいだの、お花屋さんになりたいだのと言っていた記憶はある。
しかし、中学生になり、高校生になり…少しずつ大人になっていく中で、私には夢中になれる物が何一つないという事に気が付いた。
誰もが夢を叶えて生きているなんて事はあり得ないが、そもそも私にはどうしても叶えたい夢という物事態、存在しないのだ。
それでも、それなりに安定しているこの仕事は“嫌い”ではなかった。
どのみちどこかの会社に属し働かなければいけないのならば、私が優先する事は安定した収入だ。
これといった趣味もなければ欲しい物もない。
恋人もいないのだから特に出掛ける用事もない。
最低限生きていくために必要な安定した収入…ただそれだけだ。