第2章 高校教師
バスに揺られながら、ぼんやりと窓の外を眺める。
もう9月だというのに、相変わらず暑い日が何日も続いていた。
いつまでも続く夏休みのような日差しが鬱陶しい。
ふと、故郷の冷たく心地好い海風を思い出した。
東京に来たのは大学1年の時だった。
見るもの全てが初めてで、都会の放つ独特な空気に圧倒されたのを今でも覚えている。
まるで無機質なプラスチックのような街。
来る日も来る日も多くの人とすれ違うが、誰も私を知らない。
北国の田舎町で育った私はすぐにホームシックになってしまった。
しかし、人間とは慣れる生き物なのだろう。
今では私も、その無機質な街の一部になってしまった。
桜の開花とともに訪れる春
茹だるような暑さの夏。
色の無い秋。
雪の降らない冬。
それも今では当たり前の風景だ。
バスを降り、短い距離を歩く。
あと何回、この毎日を繰り返せばいいのだろう。
私にとっての未来は、もはや“残りの人生”でしかないのだ。