第3章 友情か
「橘先生って面白い事言うんだね。」と、愛美先生は声をあげて笑ったが、もちろん面白い事を言ったつもりなどない。
本心を言ったまでだ。
楽しそうに大きな声を出して笑う愛美先生の方が面白い。
私にとっての愛美先生は、余裕のある“素敵な大人の女性”であると同時に近寄りがたい存在でもあった。
こんな風に笑う人だなんて…思ってもいなかった。
「私の地元って東京でも田舎の方で、周りは山と川と畑しかなくて。
橘先生って函館出身でしょ?
もしかしたら、私の地元の方が田舎かも。
高校生の頃なんて、パンツが見えそうなくらいのミニスカートにルーズソックスを履いて田んぼの中を自転車で爆走しながら駅まで向かってたもん。
当時人気だった女性歌手のメイクや髪型を真似してさ。
何かに憧れて、何かになりたくて。
私は橘先生の言うような“素敵な大人の女性”なんかじゃないよ。
私は“ちょっとお化粧の上手な”ただの保健室のオバサン。」