第3章 友情か
「橘先生ってタバコ吸うんだ?」
「…ええ。」
「何だか意外。」
そう笑いながら、愛美先生は私の隣へと腰を下ろす。
以前からこうして愛美先生は時おり声を掛けてくれる事もあった。
しかし、私は彼女とどこか距離を置いて付き合うようになっていた。
余裕のある素敵な大人の女性である愛美先生は、私とは住む世界が違う人間だ。
近付き過ぎないのがお互いのため。
そう思っていたからだ。
「すみません…煙たいですよね。」
吸いかけのタバコを消し、コーヒーの空き缶の中へと捨てる。
そんな私の姿を見て、愛美先生はふふっと柔らかに微笑んだ。
「いいよ、消さなくて。」
「いえ…次からは喫煙室に行きます。」
「別に注意しに来たわけじゃないから。」
だったら何をしに来たのだろう。
いつもと変わらずに“余裕のある大人の女性”の表情で笑う愛美先生が、どこか不気味に思えた。