第28章 シャッター
開演時間が近付く。
メンバー、スタッフの間にも緊張感が高まる。
「ねぇ、棟方さん。
ちょっと家族の写真撮ってくれない?」
高杉さんがそう声を掛けたのは、フォトグラファーの棟方マサトさんだ。
アイヴィーのライブフォトを始め、様々な作品の撮影を行っている実力派のフォトグラファーだ。
今回の5大ドームツアーの最終日である今日も、棟方さんが撮影を行う事になっている。
私が今日、楽屋にまで押しかけたのは…この棟方さんに会うためだった。
「棟方さん、お疲れ様です。」
「あ、美波さん。お疲れ。」
「先日の写真展、とても素晴らしかったです。」
「ありがとう。
美波さんも頑張ってるみたいだもんね。
インスタグラム、フォローさせてもらってるよ。」
「ありがとうございます。嬉しいです。」
「でも、気を付けてね。
ライブハウスは機材壊される時もあるから。」
私の今の仕事は…ライブカメラマン。
小さなライブハウスを中心に撮影を行なっている。
今は娘が小さいのでセーブをしつつではあるが、とてもやりがいを感じている。
それは教師であった頃にはなかった感情だ。