第28章 シャッター
彼女が猟奇的な殺人鬼を演じた主演映画。
その映画で父親役を演じた50代の人気俳優と、彼女は同棲しているそうだ。
ある日突然「先生、お米って何合炊くの?」と電話がきた時は驚いた。
今日は久しぶりに彼女に会える。
映画の中では制服をまとっていたが、彼女ももう20歳。
来年の成人式には私が着た振り袖を着たいと言ってくれている。
「そう言えば、“まなみん”は来ないの?」
花を抱き上げ、高杉さんは目を輝かせる。
「今日も来てるみたいですよ。彼氏君と。」
「何だよ、まだ続いてるのかよ。
まなみんには俺みたいな年上の男がぴったりなんだよ。」
駄々をこねる高杉さんに、佐久間さんは「娘の友達に手を出したら駄目だよ。」と優しく注意する。
そんな佐久間さんに「娘に手を出した奴が言うなよ。」と高杉さんは唇を尖らせた。
愛美先生と高杉さんも、今となっては“まなみん”“誠君”と呼ぶ仲だが、愛美先生に恋愛感情は無いそうだ。
「憧れは憧れのままが良いよ。」と、愛美先生はいつものように眩しい笑顔で言っていた。