第28章 シャッター
私と佐久間さんが結婚したのは、2021年の7月だった。
アイヴィーが90年代によくレコーディングで訪れていたイギリス。
そのイギリスの小さな教会で式を挙げた。
赤い目をした母と、必死で涙をこらえる高杉さん。
そんな二人が並んでいるのを見て、どこかくすぐったい気持ちだった。
私は確かにこの二人から生まれた命なのだと感じた。
それから程なくして妊娠がわかり、2022年4月。
私は待望の第一子を出産した。
“花”という名前をつけたのももちろん高杉さんだ。
病室に飛び込んでくるなり「俺の可愛い“花”ちゃん!!」と、高杉さんは持ち前の肺活量で叫んだ。
相変わらずマイペースな佐久間さんも、「“花”って可愛い名前だね。」と言ってしまったので、そのまま“花”という名前がついた。
正直、これは私も気に入っている。
目を閉じれば、故郷の桜の花を思い出す。
北海道函館市にある五稜郭公園。
星形の城郭一面に咲き誇る桜の花。
とにかく、日本人は桜の花が好きなのだ。