第28章 シャッター
「花、待って。」
歩き始めたばかりの花は真新しい靴を履き、楽屋の中を楽しそうに歩き回る。
その姿を見て、高杉さんは嬉しそうに笑った。
花が履いているのは、もちろん高杉さんが贈ってくれた靴。
満足そうな横顔を見ながら、佐久間さんはステージ衣装のボウタイを結んでいた。
2023年9月23日、東京ドーム。
今日はthe IVY初となる5大ドームツアーの最終日だ。
開演まではあとわずか。
こうして楽屋にメンバーの家族が集まる事は珍しい。
「花は俺に似て可愛いな。」と笑う高杉さんに、「いやいや、サクちゃんに似て美人なんだよ。」と八巻さんは言う。
「花は俺の大事な孫なの。」
「目に入れても痛くないってか?」
「当たり前だろ。むしろ入れたい。」
「高杉が言うと卑猥なんだよ。」
「やめろよ、花の前で。」
高杉さんと八巻さんのやり取りはいつ聞いても面白い。