第27章 生きる事を選んだ
「小松さん…私ね、今年度で退職するの。」
「うん。さっき聞いたよ。廊下で。」
「小松さんには直接言いたかったから。」
「ありがとう。」
「これからは…側で支えてあげられないけど、いつでも頼って欲しい。」
「わかってるよ。」
「あと1年だから…。」
「ううん。」
彼女は意味深な笑みを浮かべ、私の隣へとやって来た。
柵にもたれながら、青い空を仰ぐ。
温かい春の日差しを顔に浴びる。
東京の春は早い。
鼻をくすぐる草花の息吹を感じる香り。
私は彼女に寄り添うように、柵にもたれた。
「私、学校辞めるんだ。」
彼女の声は笑っていた。
「どうして?」
「前に…カットモデルしたって話したじゃん。
それで、芸能事務所の人にスカウトされたの。
学校来れなかったのも、それが原因。
親には言ってないけど、今は事務所の寮で暮らしてる。」