第27章 生きる事を選んだ
こんなにも楽しそうに話をする彼女を…私は見た事が無い。
ほんの1年半前までは、しかめ面でタバコをふかしていただけの少女が、今は自分の夢を…居場所を見付けたとでも言わんばかりに輝いている。
本来、教師であれば「高校だけでも卒業しなさい。」と説得するだろう。
しかし、私はもう教師ではない。
優先すべきは彼女の心。
彼女が見付けた夢を…私はただ応援するだけだ。
「応援してる。」
「ありがとう。
ねぇ、一つお願いあるんだけど。」
「何?」
「タバコ1本もらえない?」
彼女と並び、タバコをふかした。
それは1年半前の夏のように。
あの頃もこうして高い空へ向けて、タバコの煙を吐き出した。
私達が積み重ねた、短くて長いかけがえのない時間。
白い煙が空へと上り、風に掻き消されていく。
私達二人は、互いに“生きる事を選んだ”。
【生きる事を選んだ】おわり