第27章 生きる事を選んだ
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机の荷物をまとめていると、引き出しからタバコが出てきた。
終業式を終え、屋上の柵にもたれながらそのタバコをふかす。
まだ、彼女と放課後の屋上で過ごしていた時に買った物だろう。
「マルボロなら何でもいいよ。」
そう呆れた口調で言っていた彼女がとても懐かしい。
ここからの風景も今日で最後だ。
明日からは有給消化のため、出勤する事は無い。
後は荷物を持ってここを去るだけ。
もちろん送別会も無い。
それでも、今夜は愛美先生と田辺先生とは個人的に食事会をする予定だ。
そこには佐久間さんも来てくれるそうだ。
日本酒が豊富な個室の和食居酒屋。
楽しい予定が控えているにも関わらず、心はどこか沈んでいた。
それは彼女の事。
小松加奈。
この屋上から始まった彼女と私の関係。
このまま何も告げられずにここを去るのは嫌だった。