第25章 雨はやさしく
“甘い 甘い strawberry”
それはアイヴィーの楽曲である『strawberry』の歌詞だった。
ドラムのハイハットから始まる、大きなスケール感のあるミディアムバラード。
愛美先生も大好きな曲だと挙げていた、アイヴィーの代表曲。
そしてそれは、今朝のニュース番組で男性アナウンサーが倉田理子の事を歌っていると興奮気味に語っていた曲だ。
「美波を想って作った曲なんだ。
メジャーデビューして、バンドがどんどん大きくなって。
帰る時間もなくなって。
時々見る美波の寝顔が好きだった。
どんな夢を見てるんだろうって想像したよ。」
高杉さんの中にあった、幼い頃の私の記憶。
覚えていてくれた事が単純に嬉しかった。
確かに私達は同じ時を過ごしていた。
そして、それを綴った『strawberry』は未だ日本のロック史に大きく刻まれる一曲となっている。