第25章 雨はやさしく
「すぐに赤ん坊ができて…ちょうど俺達のメジャーデビューも決まって。
1994年12月29日。
美波が生まれた日、俺だけデビューシングルのレコーディングが終わらなくてさ。
代わりにサクちゃんが病院に行ってくれたんだよね。」
実家のタンスから見付けたあの写真は、その時の物だったのかと理解出来た。
病室のベッドの上で微笑む母と、生まれたばかりの私を抱く佐久間さんの写真。
あの写真を見付けた時は、これほどまでに穏やかな日が来るとは夢にも思っていなかった。
あの時は全てが終わった。
そう感じていた。
「初めて美波を見た時は嬉しさよりも驚きの方が大きかったな。
自分の血を受け継ぐ命がこの世界に生まれたんだって。
可愛くて…愛おしくて仕方なかった。
あの頃から美波は本当によく泣いてたよ。
顔を真っ赤にさせてさ。
小さくて壊れてしまいそうで。
そして、甘い匂いがした。
“甘い 甘い strawberry”って。」