第25章 雨はやさしく
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広すぎるベッドに二人で寝そべり、皇居御苑の奥に広がる街の明かりを眺めていた。
心は満たされていた。
自分の存在を認められたような、生きる事を許されたような…不思議な気分。
今まで失っていた身体の一部が戻ってきた。
そんな感じだ。
「“母ちゃん”と出会ったのは、俺達がまだライブハウスのステージに立ってた頃だった。
母ちゃんはそのライブハウスのバーカウンターでアルバイトしてたんだよ。
ほら、母ちゃんUKロックとか好きだったじゃん?
それで…俺が母ちゃん家に転がり込んで、同棲し始めた。」
初めて聴く、母と父の話。
母がライブハウスでアルバイトをしていた事も、UKロックが好きだった事も私は知らなかった。
母は徹底して高杉さんとの過去を隠していたのだと思う。
それは…自宅にテレビを置かないほどに。