第25章 雨はやさしく
チャイムを押すと、しばらくして部屋のドアが数センチ開いた。
警戒しているのだろうか、ドアの隙間から高杉さんが顔をのぞかせる。
「誰?」
「…美波です。
佐久間さんに、高杉さんがここにいるのを聞いて来ました。」
数センチ開いていたドアがガチャリと閉まった。
ドアガードを外しているのか、しばらくして部屋のドアが大きく開く。
「入りなよ。」
高杉さんに促されるまま、部屋の中へと入る。
大きなベッドにソファーや机。
その広さと格調の高さに驚いた。
壁一面が大きな窓になっており、その窓からは皇居御苑を望む事が出来る。
こんな豪華なホテルの一室で待機とは…やはりアイヴィーは日本を代表するバンドなのだと確信せざるを得ない。
「座ったら。」
高杉さんは冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、窓際のテーブルに置いてくれた。
喉は乾いているが、今はお酒を飲んで楽しい話を…という心境ではない。