第24章 言葉足らず
昨日の夜、神田美咲が言っていた言葉を思い出す。
“あなたは、絶対に手放しちゃ駄目よ。
仕事も恋も。
欲しい物は全部手に入れなさい。”
この言葉の根底にあったのは、自分自身を欠陥だと思う劣等感だったようだ。
「ここからなら歩いて帰れるでしょ?」
そう力無く笑う神田美咲の手を、思わず握りしめた。
「何?」と驚く神田美咲の手を両手で包み込む。
しっとりとした美しい手。
しかし、その手はずいぶんと冷たい。
「あなたの言う通り…女は生まれながらにして呪われています。
物心ついた頃から容姿を比べられ、大人になれば仕事に恋人のスペック。
結婚をすれば子供を催促され、子供を産めば二人目を期待される。
そして、仕事をしながら当たり前のように家事や育児を求められるんです。
でも…そんな呪い、断ち切って良いんですよ。
他人から押し付けられる理想に振り回される人生なんて送らなくていい。
あなたの人生はあなただけの物です。
私は…そんなあなたのファンだから。」