第24章 言葉足らず
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「こんな所で会うなんて運命ね。」
そう笑う神田美咲は、車窓から流れゆく街並みを眺めていた。
正直、もう二度と会いたくないと思っていた。
幸せだった佐久間さんとの穏やかな日々。
そんなかけがえのない毎日を一瞬にして滅ぼした女。
全ての元凶は神田美咲。
…そう思う気持ちもあるが、やはりどこかで私達の関係が公になる日はきただろう。
それがたまたま今回の神田美咲がきっかけだっただけ。
愛美先生に関して言えば、全て私の責任だ。
「悪かったわね。」
「え?」
「うかつだった。
写真…撮られちゃうなんてね。」
「…はい。」
「あなたまで“内縁の妻”呼ばわり。
仕事は?支障あるんじゃない?」
「そうですね。」
「高校教師って言ってたかしら?
このままだと学校にいられなくなっちゃうかもしれないわね。」
気にかけてもらえているのなら嬉しいが、影響があるのは私よりも神田美咲の方だ。